余話
近づいてくる騎馬に、テオは手綱を引いて馬車を止めた。いまは他に街道を行く者はいない。
騎馬に乗っているのは、ありふれた旅装姿のゲオルグだった。ただ、もし此処に黎明(リィミン)軍の者がいたら、彼の顔に眼帯のないことに驚いたことだろう。少し手前で馬を止め、感慨深げな表情でゲオルグは親子を見つめた。ルキアはテオに向かって手を差し出した。
「父上、手綱を預かるよ」
「………あぁ、頼む」
ルキアに手綱を渡し、テオは馬車を降りた。ゲオルグも馬から降りた。二人は同時に歩みよったが、いつの間にかゲオルグは駆けだして、縋りつくようにテオを抱きしめた。テオもしっかりと受け止めるように、ゲオルグを抱き返す。
「久しいな、ゲオルグ。元気だったか?」
テオの肩に額を乗せて、ゲオルグは頷いた。
「左眼は、ちゃんと見えるんだな」
これにも頷きが返る。
「親友の頼みは果たせたのか?」
しばらく、ゲオルグは動けなかった。縋りつく腕に力が入るのにあわせるように、テオは優しく背中をさすってやった。
ようやく頷きが返ってきた。
「………お前は、お前の信念を裏切ったのか?」
やや強く、首が左右に振れた。マントを握りしめる手に、ますます力が入る。
「ならば良い。…………それが、どれほど残酷な選択であったとしても、己の信念に基づいてされたものであるならば、私はよくやったとお前を讃えよう」
世界が敵にまわっても、唯一無二の存在がそう言ってくれるなら、ゲオルグにはそれだけで充分だった。
大きく息を吐き出して、ようやくゲオルグは顔を上げた。久しぶりに間近に見たテオは、昔と少しも変わることなく優しい眼差しだった。
「いまは、どうしている?」
そう問われて、ゲオルグは再びテオの肩に額を載せた。
「…………いまは、愛した女の忘れ形見と、愛する女のために力を尽くしている………」
「そうか……。…………。今度は人妻じゃないだろうな?」
大真面目に訊かれて、ゲオルグは笑い出した。
「大丈夫だ。前は婚約してたらしいが」
だが、はたと気づく。そんなことよりも厄介な彼女の身分を思い出す。
「………まぁ、身分違いではある」
テオはくしゃりとゲオルグの頭を撫でた。
「女の了解が取れたなら連れてこい。かくまってやる」
「あぁ、その時は頼む」
ニヤリとゲオルグはいつものように笑った。
辛抱強く待っていたルキアをゲオルグが抱きしめたのは、そのすぐあとのこと。
おしまい
『異邦人たちの午後』の少しあとのお話です。いかがでしたでしょうか?
“標(しるべ)の者”も“道を照らす者”も“星の紋章”を差します。“27の真の紋章”ではないんですよね? これって・・・。なので、外伝の外伝扱いなんかにしてみたり。“太陽の紋章”は真紋だけど、“黎明”も“黄昏”も眷属であって真紋ではない、という解釈で良いのかしら。とすると、女王騎士エンドでほぼ決定の当寮では、王子をこのシリーズでどう扱っていこうかな・・・(;'-')
閑話休題。
どうしてもルキアとゼラセを会わせたくなってできたお話です('-'*) サイロウを口実にして、『5』でお気に入りだったキャラを出してみました。
トーマとマルーンのコンビは大好き(*^_^*) マルーンは人で言えばもう大人なのだろうけど、トーマと同じレベルでつるんでると良いな(笑)
イザベルとマティアスのコンビも大好きなのです。初回のラストパーティに入ってました。ゲオルグ入れられないから。軍人繋がりで、テオたちと交流があったと思います。イザベルの父親は騎士団の解散後、落ちぶれてしまったそうなので、不甲斐ない父とは違うテオに憧れていたのだと思うデス('-'*)
ゼラセは熱いお風呂に入っても肌の色が変わらないってことは・・・と考えてあんな存在と予想してみました(;'-') ジーンもそれに近い者って考えてるデス。
オマケは本当にこぼれ話になりました。だってさ、継承戦争後、もう二度とテオに会ってないって思ったらそれはあんまりにも悲しくて(≧△≦) 時期的にサイアのことの前になってしまうのもつらかったのだけど、そこまではもうしょうがないよね・・・(T_T) 王族と元騎士の駆け落ち・・・見たかったわ(ノ_<。)
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