オマケ




 次の日、城内の中庭にある小さな池の畔にて。

ルキア「カスミ、『初恋の詩』、詠ってよ」

 唐突に、ルキア、カスミに切り出す。

カスミ「え……!? ルキア様、どうしてそれを……?」

 カスミ、頬を染めて慌てる。

ルキア「昨日、うとうとしてたらカスミの歌声が聞こえたんだ。それに、なにやら曰く付きだってのを、ヴァンサンたちに聞いたしな」

 カスミ、あの時のバラ園に、ヴァンサンとシモーヌもいたことを思い出す。

ルキア「あれはなかなか雅な光景だったよって言われて、なんか癪に障る」

 ルキア、少しむくれたように。

カスミ「そんな大層なものでは………って、ルキア様!?」

 言葉の途中で、ルキア、カスミの膝を枕に寝転がる。

ルキア「私のいないところで、カスミが綺麗なところを他の誰かに見られるなんて、気に入らない」

 わがままな言葉に、カスミ、吹き出す。

ルキア「なに……?」

カスミ「いえ、なんだか、すごく嬉しくて……」

 幸せそうに笑うカスミ。ルキア、愛おしくその頬に触れる。

ルキア「…………。本当はなんでも良いんだ。カスミの声が聞けるなら……。ただなにか話す声でも、笑い声でも……」

 触れる指先は頬から唇をなぞり、首筋を辿ってたどってなだらかな肩、腕をつたって手の甲をすべり、細い指を絡めとる。

カスミ「ルキア様………」

 そっと名を呼べば、子供のような笑顔が返り、とろとろとその瞼は落ちていった。

 寝息にあわせるように、手で優しく髪を梳く。

カスミ「いつかこの手が離れても、きっと、私を見つけてくださいね」

おしまい





 時々、こんな他愛のない話を書きたくなることがあるデス。今回は、単にカスミに詠って欲しかっただけ。
 いかがでしたでしょうか?

 カスミが詠ったのは、佐藤春夫『昼の月』。言葉の流れと雰囲気がお気に入りです。シエラには、ボードレール『月の悲しみ』(訳・村上菊一郎)を詠ってもらいました。こちらはすぐにシエラのイメージが浮かんだ詩です。ちょっと長いので止めようかとも思ったんですが、やっぱり捨てきれず、全部詠ってもらいました('-'*)
 どちらも詩集を持っているわけではなく、光琳社出版様の『月の本』で知りました。『昼の月』はいじってませんが、『月の悲しみ』のほうは、私好みでひらがなの言葉が漢字になってたりします。

 シエラが何故クラウスの前でだけ、『無理矢理止められたその時間に戻れる』のか。うちではこういう理由だったのでした。