放課後



 湖の畔にある全寮制の聖デュナン学院の終業の鐘が鳴り、生徒たちが三々五々、教室から出てきた。
「じゃあな!」
 デイバッグを片手にサスケは教室を飛び出した。
「どうしたの、あれ……?」
 冷ややかにサスケの背を見送って、ルックはフッチに訊いた。
「図書館だよ。今日、カスミ先輩の当番日だろ」
「………マメだね……」
「君みたいに、放っておきっぱなしってのもどうかと思うけどね」
 キッと睨みかえせば、すでにフッチは教室から逃げ出しているところだった。

 他の追随を許さない蔵書量を誇る図書館は、厳しい司書の目が行き届き、静寂に包まれている。
 カウンターでは、最上級生の印の臙脂のリボンを襟許に結んだ女生徒が二人、本の貸し出しや返却を受け付けていた。
 そのカウンター席を正面から見ることができる机にサスケは陣取った。デイバッグから参考書やノートを取りだし、勉強する振りをしながら、ちらりとカウンターへ視線を走らせる。黒髪の女生徒が、にこりと微笑んだ。顔を真っ赤にして、サスケはノートに向かった。
「今日も来てるね、サスケ」
 カウンター席でテンガアールが、クスクス笑いながら言った。ほんのり頬を染めて、カスミは頷く。
「寮なんてすぐそこなのに、一緒に帰ろうって聞かないの」
「なに言ってるんだい。僕だってヒックスが卒業するまでは、毎日、一緒に帰ってたよ。距離なんて関係ないの。一緒にいられるのが嬉しいんだから。カスミは、嬉しくないの?」
「…………嬉しい……」
 うつむき加減に答えると、テンガアールはよしよしとカスミの頭を撫でた。
「もうちょっと、サスケに甘えてあげても良いんじゃないのかな」
「……え、でも……」
「歳の差なんて関係ないんだからさ。男の子って、女の子に甘えられるの好きだよ」
「………テンガ、実感こもってる」
「ふふ、当然でしょ」
「頼りにしてます、先輩」
「任せなさい」
 少女たちは顔を見あわせて、クスクスと笑った。
(なんか、楽しそー……)
 それをぼんやりと眺める少年一人。

 校舎から寮までは中で繋がっていて、ものの五分とせずに行き来ができる。だが、サスケとカスミはいつも一旦外に出て、中庭を通って寮へ帰るルートを好んで歩いた。
 だんだん涼しくなってきた風が気持ち良い。
 サスケが今日の出来事を面白可笑しく話し、カスミはそれを微笑みながら聞いていた。
 サスケは、ふと言葉を止めた。
「どうしたの、サスケ?」
 突然、立ち止まってしまったサスケをカスミは振り返る。
「………ん、来年の夏になったら、もうこうやってカスミと一緒にいられないんだなって思って………」
「まだハロウィン前なのに、もう夏の話……?」
「だって……!」
 不機嫌そうに言い返せば、カスミはにこりと笑った。
「ね、サスケ。私、来年、クリスタルバレーの大学に進学するの」
「………知ってる。もう春には決まっちゃって、ビックリした」
「うん。だって、サスケと一緒にいられる時間を減らしたくなかったから」
「え……?」
 キョトンとして、サスケはカスミを見つめた。
「七年生って、進学にしろ就職にしろ、進路を決めるのですごく忙しくなるでしょ。最後の一年なのに、サスケと一緒にいられる時間が減っちゃうなんて淋しいから。だから、一生懸命に勉強して推薦枠に採ってもらったの。もともと目指してた所だったから、余計に頑張れたし」
「カスミ………」
「だからね、これから卒業するまで、ずっと一緒よ。来年の夏からはなかなか会えないかもしれないけど、でも、会おうと思えば、夏休みとかクリスマス休暇で会えるし、それに、そんな先のことなんて、いまから心配してもしょうがないじゃない……?」
「………じゃあ、この一年は、一緒にハロウィンのごちそう食べて、一緒にクリスマスを過ごして……?」
「うん。一緒にニューイヤーをお祝いして、バレンタインのパーティーに出るの」
 笑うカスミがとても可愛くて、サスケはぎゅっと抱きしめた。
「いっぱいいっぱい、想い出作ろうな」
「うん」
 カスミの身体は柔らかくて、いつも良い匂いがして、サスケは幸せで眩暈がした。



 談話室の前を通り過ぎようとしたモンドは、テーブルにサスケが俯せて寝入っているのを見て足を止めた。
「……カ…ミ………むにゃ……」
「…………」
 起こしてやるべきかどうか迷っていると、今度はカスミがやってきた。
「あ、モンドさん、ちょうど良かった。許可がおりたので、私、一週間ほど里へ帰ります。あとのことはよろしくお願いします」
「承知いたしました。お気をつけて」
「はい。……あら、サスケ……?」
 すっかり熟睡しているサスケの手許に、図書館の本が開きっぱなしになっているのをカスミは目に留める。
「こんなことしたら、本が傷むってエミリアさんに叱られるわよ」
 しょうがないわねと笑いながら、でも起こさないようにそっと、カスミは本を取りだして、栞をはさんで閉じるとテーブルの上に戻した。
「………トランの方々にもよろしくお伝えくだされ」
「はい、わかりました」
 モンドの言葉ににこりと笑って、カスミは足取りも軽く階段へと向かう。
 嬉しそうなカスミの背中と、サスケの寝顔を見比べて、モンドは盛大に溜め息を吐いた。
END






 前サイトのキリ番『20000』をゲットされたSpinel様のリクエスト『サスケ×カスミでラブラブ学園カップル』でした。いかがでしたでしょう?

 初のパラレル、初の学園ラブでした、実は(笑)
 しかも、サスケとカスミのカップリングで「うきゃぁ〜(>_<)」と仰け反ってしまう始末。どうなることかと思いましたが、なんとか形にできましたのでお披露目。ありきたりなあのオチは、こうでもしないと私が納得いかないからデス(爆)
 めっさ短いですが、もうこれでいっぱいいっぱい(>_<) さすがにいつもみたいに設定てんこ盛りにするわけにもいかず、シンプルを目指したのも事実ではありますが。パラレル物は読むのは好きですが、だからといって書けるわけではないのだな、と身に染みました。
 確かこれ書いてたとき、ハリポタ読んでたはず。全寮制とか、七年制とかその辺から来てます(;'-')
 パラレルはこれが最初で最後です。もしまたリクされても、きっとお断りしちゃうわ(;'-')

 Spinel様にはOKいただけてホッとしました。リクエストありがとうございました(*^_^*) とても勉強になったです。