エルイールの街並みが水平線にぼんやりと見えた。オベルに向かう途中、乗りあわせた商船はこの小さな島に寄港した。
「小さいけれど、活気のある島だね、カスミ」
「はい、ルキア様」
 ルキアとカスミは今宵の宿を取り、島を散策した。
 切り立った断崖絶壁が、海岸をふさぐ。だが、どういう自然の理か、壁は穴を開け、向こう側の海岸へと続いていた。
「兄さんたちもお宝目当てかい?」
 陸側から声をかけられ、振り仰ぐと、網を手入れする青年がいた。
「お宝?」
 ルキアは訊き返した。
「あれ、知らないのか」
 人懐っこい青年は、二人の近くに歩いてきた。
「この先の入り江は、呼び戻しの海岸って言われてるんだ。この群島の海でなくしたものがなんでもあそこへ帰ってくる」
「なんでも……?」
「そう。物でも、人でも。難破船のお宝目当てに、一時期はえらく賑わったらしいけど、もうそれもあらかた獲られ尽くしたあとさ」
「へぇ、そんな便利な物があるんだな………」
 言葉ほどにはあまり興味なさそうに、ルキアは洞窟の方へ目をやった。
「………紋章術なんですか?」
「さぁ、漁師の俺には詳しいことはわかんねぇな。俺の祖父さんが自分の祖母さんから聞いた話では、群島解放戦争が起こる前、漂着した怪しげな二人の男女が海岸になんかしていったって。は恐ろしい呪いの言葉を吐いたとかなんとか」
 チリチリと右手が疼いて、ルキアは視線を落とした。だが、右手の紋章の反応はそれだけだった。
「まぁ、花の絶えない綺麗な海岸だから、デートにはピッタリだと思うぜ」
「それは良いね」
 にこりと笑ってルキアが手を差し出せば、ほんのり頬を染めてカスミは手を載せた。
 青年と別れて、二人は洞窟を抜けた。
「あぁ、これは確かに綺麗だ」
「はい」
 白い砂浜を囲うように色とりどりの花が咲き乱れていた。
 波打ち際をそぞろ歩いていると、カスミが足を止めて辺りを見まわした。
「どうした?」
「………此処は………お婆様の気配がします………」
 やっぱり忍びの者は敏いなぁ、とルキアは苦笑する。
「呼び戻しの海岸って言うくらいだから、そんな気はしていた。此処に術を施したのはヘリオンだな。………呪いの言葉を吐いたのもヘリオンか………」
「……? 漁師さんは、男だと……」
 カスミが首を傾げると、ルキアは右手を軽く振った。
「こいつがそこでブーイングを出したのさ。男じゃないなら、残った女のほうだ」
「………百五十年以上も前の話では、伝承も歪んでしまうものですね」
「今夜は面白い話が聞けそうだ」
 ニヤリとルキアが笑う。しょうがない人だ、とカスミは苦笑した。
 カスミは何処までも青い水平線を見つめた。もし、この海で死ねたなら、生まれ変わった自分の魂魄はすぐにルキアに見つけてもらえるのではないか。
 急に手を引っ張られて、カスミは背中からルキアの胸に倒れこんだ。
「ルキア様……!?」
 仰のくようにルキアを見上げると、額にキスを落とされた。
「“呼び戻し”なんて必要ないだろう? 私たちには」
 花開くようにカスミの表情が綻ぶ。
「はい、ルキア様……」
 二人が離れることは、もう二度とないのだから。
END




 お疲れ様でした。Twitterで、幻水クラスタ様のお年玉用に書いた話デス。いかがでしたでしょうか?
 めでたく『ラプソディア』をクリアしましたのでサイトに正式収蔵となりました('-'*) これをクリアしたからといって、私の知りたかった答えはありませんでした。残念・・・。
 ウォーロックが世界樹を召喚した経緯を知りたかったのですが、それについてはなにも語られてなく、こうして妄想の赴くままに書いた話で問題ない、と判断しました('-'*)
 というわけで、ウォーロックは“セイリオスを望む者”の一員です。世界樹を召喚して彼がどうなったのか、そんな話もこねてます。いつかry・・・(;'-') 私、あの二人は絶対に年齢詐称してると思ってます('-'*)

 テッド×フレアを試し書きしてみようと考えた話だったのですが、思いっきり『&』ですなぁ・・・(>_<)
 ルキアとカスミは、『2』以降の時間軸です。婚前旅行デス('-'*) 4様にはまだ会ってません。

 話の内容がちょっとマズいかなぁ、と思わないでもありませんでした。他意はないのです。どうか気分を害された方がいませんように・・・。