Hug Day/part 4



 風渡るエバグリーン城で、ブラス城へ帰還するクリスをヒューゴは見送った。
「…………もう、憎んではいないよ。あなたと戦うことがないと良い、と心から願っている」
「ありがとう、ヒューゴ。私も、そうであるよう願っているし、努力は惜しまないつもりだ」
 相変わらず武骨な甲冑を身にまとうクリスを、ヒューゴはぎゅっと抱きしめた。
「ヒュ、ヒューゴ!?」
 雪花石膏のような肌と褒め讃えられたクリスの頬が真っ赤に染まった。
「うちの挨拶だよ。あんまり深く考えずに抱き返してくれるとありがたい」
「そ、そうなのか」
 クスクスと笑いながらヒューゴが言うと、ぎこちなく背中に腕がまわされた。硬く冷たい甲冑ではあまり抱き心地は良くないだろうに、とクリスは思うがヒューゴの笑い声は止まなかった。

 クリスたち騎士団が見えなくなるまで立ち尽くしていたヒューゴは、やがて後ろを振り返った。
「………君も、もう行ってしまうんだ?」
 ツインテールを風にゆらして、ベルがうつむいて立っていた。その少し後ろにはからくり丸Zもいる。
「………ん。お母ちゃんに追いつけそうなん」
「そうなんだ……! 良かったね」
 我がことのように喜んでくれるヒューゴに、ベルも照れたように笑った。
「……で、あの、ね」
「うん……?」
「う、うちにも、ハグ、してくれへん?」
 顔を真っ赤にして、両手を胸の前でもじもじと動かしているベルは本当に可愛い。
「もちろん」
 ヒューゴがゆるく抱きこめば、ベルは首に腕をまわしてぎゅうっと抱きついてきた。
「また会えるかどうかもわからへんけど、過去形なんかで言わへんよ。………大好き」
 名前に違わぬ声音が、ヒューゴの耳朶をくすぐる。
「…………ん」
 愛しそうに眼を閉じて、ヒューゴは頷き返した。
「うちとしてはさ、此処が帰る場所ってほんまは言いたいねん。せやけど、うち、ハルモニアに目をつけられるわけにはいかんのや……。これだけは、絶対に………。堪忍な、ヒューゴ………」
 何度も二人の間で交わされた確認事項。
「ん、わかってるよ」
 ただの子供の約束だってできやしない二人だけど。
「君に会えて良かった。この気持ちに変わりはないから。だから、泣かないで。ね……?」
「な、泣いてへんもん……!」
 顔を見せないようにとベルは抱きしめる腕に力をこめているのだろうが、ヒューゴは肩口がじんわりと濡れていくのを感じている。
「元気でね、ベル」
「………ん、ヒューゴも。ほんま、大変やろうけど、無茶せえへんといてな」
 ようやく腕を解いて、ベルはヒューゴを見つめた。赤い目許を、優しくヒューゴは拭う。それから、ベルの頬に交互に自分の頬を触れさせて、最後に唇にキスを落とした。
 キラキラと陽の光を反射する湖だったり、さわさわと風が音を立てる草原を見るたびに、きっとお日様のような笑顔や、凛々しくも優しい笑顔を想い出すのだろう。
 そう互いに確信しているからこそ、二人は笑顔で道を別った。
 いつの日か、また会いたい、とそっと願いながら。
END





 良かった、できた〜(;'-') ハグの日ver.2014デス。ヒュークリと見せかけて、ヒューベルでした(笑) いかがでしたでしょうか?

 もしかしなくても初の『3』時間軸で『3』キャラ登場ですかね!? その割にはさらっとしすぎですが(;'-')
 うちとこのベルちゃん、似非関西弁使用デス。すみません、勝手な設定つけてましてm(_ _)m モデルは某少女漫画の牡丹ちゃん。あまりに古すぎて、ご存じの方はいないかも知れませんが、あんな風に勝ち気で強くて涙もろくてお父ちゃんとお母ちゃんが大好きな子です(*^_^*)
 ハルモニアに自分の存在を知られるのが嫌なのは、『想いの結び目』でルキアがそう言ったからです。
 ヒューゴとベルがまた会えるかどうかは、私の中ではまだ未定です(ぁ でも、きっとメグは会いたがるかも。「可愛い娘の初恋の子なんて見たいに決まってるわよ!」とか言いそう(笑) ルキアがヒューゴに会うのはこのあと、ヒューゴもカラヤに帰ってからのことです。