狂い踊るワルツ



 黄金の都の名に相応しい城の大広間。煌びやかに着飾った男女がゆるやかな音楽にあわせて踊っている。
 玉座にすわりそれを眺め下ろすバルバロッサは、考えることを放棄していた。
 最愛の妃を亡くして早数年。
 ただの病気や事故のせいならまだ立ち直れる余地はあったのかもしれない。だが、妃が死んだのは、代々引き継がれてきた得体の知れない力のせいだった。孤独であれ、と強いるその力を捨ててしまえば良かった。こんな想いをするくらいなら。
 だが、そうすることは国を捨てることに他ならず、良き皇帝たらんとしていた当時の己にはどうしてもできなかった。
 いま、同じ選択を迫られたのなら、間違いなく捨てることができるのに。
 我が身を思いやってもくれない国と、最愛の妃と、どちらが大切か。いまなら叫ぶことができるのに。
(そなたがいないのでは、なにもかもが無意味だ………)
 孤独な皇帝は部下たちに気づかれぬように奥歯を噛み締めた。
「陛下、踊られないのですか?」
 突如、鼓膜を震わせたどんな楽の音よりも美しい声。バルバロッサは晩餐会が始まってからようやく笑顔を浮かべた。
「そなたを待っていた、ウインディ」
「まあ、畏れ多いこと」
 最愛の妃によく似たまったくの別人は、優雅に腰を折った。
 孤独に取り憑かれたバルバロッサは、ウインディも絶望的な孤独を抱えていると初めて会ったとき悟っていた。唯一の理解者。妃とはまた別の愛情を注ぐようになることに、そう時間はかからなかった。孤独を癒せるのは同じ孤独を感じている者にしかできないのだ。
 ただ、ウインディには孤独を癒してもらうつもりは毛頭ないようで、内に秘めたものをひた隠している。それもまた、バルバロッサをさらなる孤独に追いやったが、それでも良いと諦めることも、いまとなっては簡単だった。
 すでに、バルバロッサは捨てることを選んでしまっていたから。
「参ろうか」
 立ち上がり手を伸べれば、ウインディは艶然と笑ってその手を取った。
 広間で踊る男女の間に混じり、孤独に蝕まれた二人が踊るのは狂気の調べか。
END





 手許に資料が残っていなくて、第何回だったのか不明ですが、深夜の真剣文字書き60分一本勝負に参加したお話です。使用お題は、タイトルの『狂い踊るワルツ』。
 『恋人の日』のお話が再録で申し訳ない・・・。でも、なにかあげたかった。
 でもでも、『恋人の日』のタイトルをつけるのは憚られました(;'-')

 これと併せて、『Wheel of Fortune』とか『異邦人たちの午後』とか読んでみるとさらにお楽しみいただけるのではないか、と思います。と良いなぁ、と願ってます。

 フリーワンライに幻水で参加したのはこれ一本限りです。あとはずっと、某◆の某カプを某海外ドラマの設定で書いてます。興味ある方は、ワンライのタグを探してみてね('-'*)