S-10 再会

 ミューズ市がハイランド軍の手に落ちた。まさか、ジョウイがあんな行動に出るなんて……。また散り散りになって逃げなくてはならなくなった。今度の落ち合う場所は、サウスウィンドゥ市。
 ナナミとピリカと一緒に、まずはコロネの村まで逃げてくることができた。
ナナミ「サウスウィンドゥに行くには、ここから船でクスクスの村へ行って、さらに南に行くんだって。地図職人の男の子が教えてくれたよ」
ゴクウ「あ!!」
ナナミ「え!? ゴクウ、どうしたの?」
ゴクウ「地図職人を仲間にしなくちゃ。ナナミ、ありがとう、思い出させてくれて」
ナナミ「え、えぇ!? いまから行くの? ピリカちゃんもいるんだよ」
ゴクウ「大丈夫だって。モンスターに会ったら逃げれば良いんだし、いざとなったら、僕とナナミだけで充分、戦えるよ」
 いったん入りかけたコロネの村を出て、地図職人のあとを追った。
【そうだよね、地図は必需品だもんね】
 テンプルトンから“水滸図”をもらって、改めてコロネ入り。
 だけど、ハイランド軍が船着き場を押さえてしまって、クスクスまで渡れない。
ゴクウ「どうしよう……」
ナナミ「ピリカちゃんも疲れてるみたいだし、一度、宿屋へ戻って対策を考える?」
ゴクウ「そうだね」
 宿屋へ戻ると、そこへ………。
ゴクウ「あれ……? アイリ?」
アイリ「ゴクウ!! ゴクウじゃないか、元気だったか?」
 キャロで別れたきりの、アイリたちに出会った。
ゴクウ「うん、なんとかね。アイリも元気だった?」
アイリ「あぁ、見ての通りさ」
ゴクウ「こんなところでまた会えるなんて嬉しいな」
アイリ「そ、そうかい……? ……うん、あたしも会えて嬉しいよ」
【あー、お取り込み中のところ申し訳ないんだけど】
 なんだよ、お母さん。いま良いところなのに。
【隣でお姉ちゃんがヤキモキしてるわよ】
 ………忘れてた。
 ナナミが僕を睨んでいる。
ゴクウ「えっと、僕とジョウイがキャロへ帰ったときに、一緒に旅をしたんだよ。アイリとお姉さんのリィナとボルガン」
ナナミ「そう」
 ナナミの返事は素っ気ない。一方、ピリカはボルガンと意気投合したみたいで、一緒に遊んでいた。
ゴクウ「で、こっちは僕の姉のナナミと、トトの村で知り合ったピリカ」
リィナ「お姉さん……。良かったわね、アイリ」
アイリ「姉貴!」
 場所を宿屋の食堂に移して、僕たちはお互いの近況を報告しあった。アイリたちもサウスウィンドゥに行きたいらしい。
リィナ「でも、船が出ていないのよね」
アイリ「そうなんだよなぁ」
ナナミ「困ったよね」
 女の子たちは口々にそう言って、ジッとこっちを見た。
 やっぱり、僕がなんとかしないとダメだよね………。
【頑張れ、男の子】
 ま、アイリが喜んでくれるなら良いか。




S-11 銘刀

 アイリたちと無事にサウスウィンドゥに着き、“熊さん”もといビクトールさんたちとも合流することができた。
 ビクトールさんたちの新たな雇い主は、サウスウィンドゥ市国。散り散りになった仲間たちが集まるまでに、ノースウィンドゥ周辺の異変の調査をすることになった。
 ボルガンとリィナはお留守番で、ピリカの面倒を見てもらうことにした。
リィナ「ねぇ、一緒にお茶でもどうですか?」
 妖しげな微笑を向けられたのは、フリックさんだった。
フリック「え、えぇ、お、俺……?」
 確か十は歳が違うはずなのに、フリックさんのほうが慌てている。
【そこがフリックの良いところよ】
 あ、そう。
リィナ「それとも、私と一緒はお嫌ですか?」
フリック「いや、いや、そういうわけじゃなくて………」
ゴクウ「美人のお願いは断っちゃいけないよね」
ビクトール「そうそう。じゃ、あとは頼んだぜ、フリック」
【私もフリックとお茶したい〜】
 馬鹿なこと言ってないで、行くよ、お母さん。
 お母さんを引きずって、僕たちはノースウィンドゥへ向かった。
 そこで遭遇したのは、変態吸血鬼野郎。アイリを花嫁にするとかなんとか言って、絶対許さない!
【……ゴクウ、それじゃあ、私のことをとやかく言えないわよ】
 ともかく、あいつを倒すには“星辰剣”がいる、とビクトールさんが言った。
【あんなに苦労して取ってきた銘刀を捨ててくるなんて、ビクトールったら……!】
 お母さんはわけのわからないことをぶつぶつ呟いて怒っていた。
 そして、“星辰剣”も怒っていた。
 問答無用でバトルに持ちこまれる。とばっちりだー!
ビクトール「わ、悪かった、も……もう気が済んだだろう。そんなに、拗ねるなよ……」
 たまった怒りを発散できて、少しは“星辰剣”は機嫌を直したようだった。それにしても、エラソー。
 “27の真の紋章”の一つ、“夜の紋章”が化身した剣らしいけど………。僕は思わず、自分の右手を見つめてしまった。




S-12 お城の名前

 ネクロードには逃げられたけど、ノースウィンドゥからゾンビを一掃することはできた。
 でも、サウスウィンドゥがハイランドに攻め落とされてしまった。フリックさんたちはここまで逃げてくるときに、リィナがまた必殺技を使ったみたいだったけど、フリックさんもその内容を教えてくれなかった。あぁ、気になる。
 と、冗談はさておき。
【本気だったでしょ】
 お母さん!
 ともかく、この廃墟に立て籠もって王国軍を迎え撃たなくちゃいけなくなった。アップルの兄弟子であるシュウを仲間にする。この人もとってもエラソー。軍師って、もっと控えめなものかと思ってたけどなぁ。
 でも言うだけあって、作戦はちゃんと成功した。僕が此処のリーダーにされるというオマケがついたけど。
 そうすると、やっぱりこの本拠地に名前がいるよね。なにが良いかな、お母さん。
【梁山(リアンシャン)城】
 ………その名前は、噂に聞いたトランの解放軍の本拠地と同じ名前では。
【だって、お城の名前はもうそれしか浮かばないんだもん】
 ………この先、ずっと同じ名前にするつもりだろうか。
 まぁ、良いか。僕もトランの英雄には憧れてるし。それで決まり。
 すると、もう二度と会いたくないと思っていたあのオバサンがいきなり現れた。大きな石版と、綺麗な顔の少年を連れて。
 大層な御託を述べている間中、レックナートはにこやかに僕を睨んでいた。弟子の前であの暴言を吐かれたくないらしい。とりあえず、命はまだ惜しかったので、大人しく黙っていることにした。貴重な魔法使いを連れてきてくれたことだしね。