S-17 あ!?
パーティメンバーをそろえて、買い物に行くことにした。
ゴクウ「ビッキー、転移魔法を頼むよ」
ビッキー「はぁい」
ゴクウ「バナーの村までね」
ビッキー「うん。行くよ〜」
ビッキーがロッドを掲げる。“瞬きの紋章”の輝き。ビッキーのかけ声。
ビッキー「あ!?」
【…………】
ゴクウ「ビッキー、『あ!?』ってなにさ、『あ!?』って!?」
【もう聞こえないよ】
ゴクウ「いつもなら、『それ!』なんだよ」
【さて、何処に飛ばされちゃっただろうねぇ】
メンバー全員、不安な面持ちで光が消えるのを待つ。
ゴクウ「………此処は……?」
予想に反して、そこは部屋の中だった。
ビクトール「何処の部屋だぁ?」
ルック「…………あそこに、宝箱がある……」
ゴクウ「中身はなにかな?」
ガチャッと開けて出てきたのは。
カスミ「これは、“もぐらスーツ”ですね」
ゴクウ「ナナミのお土産にしよう」
ビクトール「お、こっちは“竜鎧”だ」
ゴクウ「ちょうど良いや。ビクトール、装備変更」
ビクトール「ラッキー」
ヴァンサン「ゴクウ、“金のエンブレム”ですよ」
ゴクウ「それは俺がもらう」
ルック「……“蒼き門の封印球”があったよ」
ゴクウ「う〜ん、今度は誰に宿そうかなぁ」
ビクトール「“特効薬×9”だ」
ゴクウ「はい、袋に入れて」
宝箱の中身を手際よく振り分けた。
【フリックが部屋の隅で頭を抱えてるわよ】
ゴクウ「フリック、どうしたのさ?」
フリック「お前ら、もう少し遠慮というものをだな」
ゴクウ「なに堅いこと言ってんの。鍵のかかってない宝箱は、全部俺のモノ」
フリック「…………」
俺たちはその部屋を出た。
カスミ「………それにしても、此処はどなたのお家なのでしょうね?」
ゴクウ「……もしかしたら、あそこかなぁ?」
階段を下りると、恰幅の良いオバサンが飛び上がって俺たちに詰め寄った。やっぱり、ラダトの道具屋だ。
道具屋のオバサン「あ、あなたたち、どうやって2階へ上がったんですか!?」
ゴクウ「ごめんなさい。転移魔法に失敗して、飛ばされちゃったんです」
道具屋のオバサン「そ、そうなの……。もう、2階へは上がらないでくださいね」
ゴクウ「はぁい」
大人しく返事をして、ラダトの道具屋を出た。店を出た瞬間、全員で船着き場へ向かって走る。
バナーの村へ向かう船に乗って、ようやく一息つけた。
ビクトール「どうするよ、もうラダトの店は出入り禁止だぜ」
ゴクウ「大丈夫。欲しかったものは、もうみんな買ってあるから」
ビクトール「偉いぞ、ゴクウ」
フリック「…………」
幻影軍の役に立てたなら、オバサンもきっと許してくれるよね。
S-18 トランの英雄
バナーの村で、偶然にもトランの英雄に会うことができた。
ちょうど連れてたメンバーが、解放戦争に参加していた人たちばかりだったので、みんながルキアに駆け寄ろうとした。それを、彼は手を挙げて制する。
ルキア「私の身体は一つだけなんだから、一人ずつ順番にしてくれないかな?」
にっこり笑ってそう言われて、五人のメンバーによる壮絶なジャンケン大会が繰り広げられた。ちなみに、メンバーは、フリック、ビクトール、カスミ、ルック、ヴァンサンである。
それを横目に通り過ぎ、ルキアは俺の目の前に立った。
ルキア「久しぶり、母さん。元気にしてた?」
【ルキアーーーー!!!】
お母さんが大泣きしてルキアに抱きついた。
ゴクウ「お母さんが視えるの!?」
ルキア「うん。私もお世話になった、というか、してあげた、というか」
ゴクウ「わかる気がする」
俺たちはにっこり笑って、改めて自己紹介をした。
ヴァンサン「ルキア」
ルキア「あ、順番が決まった?」
得意満面のヴァンサンがルキアに頷いた。
ルキア「じゃあ、どうぞ」
ヴァンサン「おぉ、我が心の友、ルキア。あなたがいなくなって、どれだけ私が悲しんだことか」
ルキア「うん、ごめん、ヴァンサン」
二人は友情を確かめるように抱きあって、お互いの背中を叩いた。
次はカスミの番だった。
カスミ「ルキア様………こんなところでお会いできるなんて……」
ぽろぽろ涙を零してカスミは言った。困ったようにルキアは微笑んで、カスミの涙を拭う。
ルキア「ごめん、心配かけて」
三番手はルック。
ルック「久しぶり……。変わりは、ないようだね………」
ルキア「おかげさまで」
ルキアはクシャリとルックの頭を撫でた。途端に、ルックの顔が真っ赤になる。……ルックにあんな態度がとれるなんて、やっぱりルキアってスゴイ。
四番目はフリック。
フリック「久しぶりだな、ルキア」
ルキアはにっこりと笑った。
ルキア「最後だから、ビクトールのも一緒に聞くよ」
ビクトール「お、そうか……? っていうか、フリックと似たようなもんだが。元気にしてたか、ルキア?」
ルキアの笑顔は変わらない。でも、俺は気がついた。目が笑っていないことに。
ルキア「“裁き”」
満面の笑みでそう言うと、右手の紋章が光った。
ルキア「さ、行こうか。宿屋にグレミオがいるはずだし」
屍二つを残して、ルキアは俺たちを促した。
ゴクウ「え、えっと、あの………」
ルキア「あぁ、彼らのことは気にしなくて良いよ。グレッグミンスター城が崩れたって生きてたくらいだから。こんなことくらいで、死にやしないって」
あくまでもにっこりと、爽やかに。
【やっぱり、怒るよね〜。あんなに心配してたのに、なに食わぬ顔で、『元気か?』なんて言われちゃったらさ】
…………。
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