S-5 清風山

 次の仕事はロックランドまでの出張だ。しかも今度はお目付役までつけられる。よりにもよってカナンとは………。凹む俺に、テッドがポンポンと背中を叩いてくれた。サンキューな、テッド。
 ロックランドまでの道中、カナンをぶっ飛ばしたくなること数十回。ロックランドの軍政官・グレイディをはり倒したくなること十数回。鬱憤晴らしに清風山の山賊退治を快諾してしまう。
【あらら、キレちゃったわね】
 清風山の山頂で、バルカスとシドニアという二人の頭目を捕まえた。
【シドニアって人、誰かに似てると思わない?】
 母さん、また、なにを言い出すんだよ。
【見た目じゃなくて、雰囲気が。声優さんの名前まで指定できちゃえそうよね】
 わけのわからないことを……。
【誰だったかなぁ……。ここまで出かかってるんだけど。う〜ん……】
 ロックランドに着いたよ。
【う〜ん……あ! そうそう、彼だよ、○ヴァ○アスのブ○ー!!】
 …………。母さん、このシーンはこれだけかい?
【そうよ、なにか文句ある?】
 べつに………。




S-6 解放軍

 気がついたら、反逆者として追われる立場になっていた。とにかくムシャクシャしていた。
 だから、かくまってくれたマリーの宿屋でぶつかってきた帝国兵にも八つ当たった。
ルキア「うるさいな、マヌケ」
 騒ぎを聞きつけたグレミオとクレオが駆け下りてきて、あわや戦闘か、というその時。
ビクトール「はいはいはい、そこまでにしときなよ」
 熊みたいな厳(いか)つい男があいだに割って入って、帝国兵を上手く言いくるめると、俺たちを外へ連れ出してくれた。
ルキア「ありがとう、助かったよ」
ビクトール「良いってことよ。俺も飯代が払えなくて困ってたところさ」
 食い逃げのダシにされて、グレミオが怒っている。ビクトールは笑い飛ばしていた。
 母さん、不思議な男だと思わない? 二度と晴れることはないと思っていた俺の気分が、いつのまにか浮上している。
【そうね、彼は好漢だね】
 第一印象は熊だったけど、俺はこの男に賭けることにした。
 帝都脱出の手伝いをしてもらう代わりに、ビクトールのある人に会って欲しいという条件を受け入れる。会って欲しい人、というのがまさか解放軍のリーダー・オデッサだったとは夢にも思わなかったけど。
 帝国大将軍の息子を、いきなり解放軍のリーダーなんかに会わせたりしないよな。
オデッサ「改めて挨拶するわ。私はオデッサ・シルバーバーグ。解放軍のリーダーよ」
ルキア「ルキア・マクドールです」
 ソニアに雰囲気が似てるかなぁ。
ビクトール「こらこら、少年。いくらオデッサが綺麗だからって、そんなに見惚れてちゃあいかんな」
ルキア「あ、ごめん。知り合いになんだか似てたから………」
ビクトール「もしかして、カノジョかぁ?」
 俺はにっこり笑う。
ルキア「まぁ、そんなとこ、かな」
オデッサ「あら、光栄ね」
 突然、バタバタと音を立てて、オデッサと俺の間に青い影が割って入った。
オデッサ「どうしたの、フリック?」
 青いマントに青いバンダナの男だった。この慌てようからみて、もしかしたらオデッサの恋人かな。ね、母さん。
【…………かぁっこいい〜………】
 ………地下アジトに入ってからやけに静かだと思ったら、この人に見惚れてたのか……。
フリック「俺はフリック。あっちの無口の大男、大刀のハンフリーとそれからサンチェス、そしてこの俺、青雷のフリックは解放軍じゃちょっとは有名なんだぜ」
 自分のことを、自分で有名だなんて言わないよな。
【良い。彼なら許す】
 ダメだ、こりゃ……。目がハートな母さんを放っておいて、俺はサンチェスとハンフリーにも声をかけた。サンチェスは挨拶を返してくれたが、ハンフリーは軽く頭を下げただけで無言。ほんとに無口だ。
 そんなとき、地下アジトに、清風山の山賊が助けを求めてやってきた。
 …………まずいなぁ。八つ当たりで捕まえちゃったようなもんだし。
【もちろん、助けに行くのよ】
 あ、母さんが正気に戻った。ともかく、その意見は賛成だったので、ロックランドまで救出に行くことにする。アジトを出るとき、フリックが言った。
フリック「俺はお前たちを信用したわけじゃないぜ。ビクトール、お前も含めてな」
【意外な言葉。ルキアたちのことはともかく、どうしてビクトールまで?】
 母さん、聞こえてないんだから。ほら、行くよ。
 ロックランドに向かう道中、俺はビクトールにフリックの言葉のわけを聞いてみた。母さんが知りたいってうるさいし。
ビクトール「あぁ、しょうがないさ。俺はまだ解放軍の新入りだからな」
ルキア「えぇ、そうなの!?」
 それにしてはかなりでかい態度じゃなかったか?
ビクトール「どういう意味だ、それは……。……で、フリックたちは解放軍決起当初からのメンバーなんだ。副リーダーとしての責任を果たすためなんだろうが、奴はちょっとピリピリし過ぎだよな。俺から見れば、まだまだ青い青い」
ルキア「ふ〜ん、外見も中身も青い人なんだ」
ビクトール「あはははは、お前、上手いこと言うなぁ」
【こらぁ! フリックを悪く言うな!!】
 はいはい、わかったよ、母さん。




S-7 トラン湖の古城

 グレッグミンスターから逃げ出して、流れ流れてとうとうトラン湖の畔まで来てしまった。亡くなったオデッサの兄・マッシュの進言、というよりは命令でトラン湖の古城を攻略することになる。が、船が出てない。いったい、どうしろっていうんだ。
クレオ「もう一度、町の人たちに交渉してみましょう」
ルキア「そうだな……」
 宿屋で一息ついたあと、俺たちはまた外へ出る。奇妙な格好をした女の子が立っていた。
ルキア「君、どうしたの?」
メグ「人を捜してるの。ジュッポっていうからくり師なんだけど、あなた知らない?」
ルキア「知らないなぁ。……君もからくり師なの?」
 からくり師なら、この格好も納得がいく。
【え、からくり師って服装規定があるの!?】
メグ「君じゃなくて、私はメグ。からくり師を目指してるんだ」
ルキア「俺はルキア。そうなんだ……あれ、メグって、もしかして家はレナンカンプ?」
メグ「そうよ。ジュッポ叔父さんにからくりを教えてもらうために、旅に出たの」
 見かけによらず剛毅な女の子だなぁ。
ルキア「ご両親が心配してたよ。あの鉄砲玉娘はって」
 メグはとっても可愛い笑顔で笑った。
メグ「だって、しょうがないもん。冒険が私を呼んでるんだから」
ルキア「あはは、それならしょうがないね。ジュッポを見かけたら、君に教えるよ」
メグ「よろしくね」
 メグと別れ、再び町の人の話を聞いていると、「命知らずのタイ・ホーならもしかしたら」という情報を得る。タイ・ホーのなじみの酒場へ入ると、甲高い女の声がした。
カミーユ「あぁー!! 見つけたよ!!」
 燃えさかる炎のような赤い髪の女の人が、つかつかとグレミオに詰め寄った。
【なになになに? グレミオの彼女?】
 グレミオの好みのタイプとはちょっと違う気がするけど。
カミーユ「この夜叉カミーユ様から逃げられると思うなよ。さぁ、この借金、いま、すぐに、耳をそろえて返しな!」
【うちって、そんなに貧乏だったの?】
 さぁ、グレミオ個人の借金じゃないかな。
 証文を見せられたグレミオが慌てている。覗きこんだビクトールの顔もひきつっている。かなりの高額みたいだけど、まぁ、“金運の紋章”があるから大丈夫だろう。
ルキア「クレオ、うちの財産でなんとか支払えないかな」
クレオ「できるとは思います。でも、戻れないことには………」
ルキア「それもそうだな」
【あの子の服装、凄いねぇ】
 真面目な話をしてるのに、茶化すなよ。
【なによぉ、さっきから視界に入れることもできないルキアに解説してあげてるんじゃない】
 しなくて良い!!
 ………本当に目のやり場に困る。今度アクセサリーを拾ったら、カミーユに“マント”を譲ることにしよう。
 強引にパーティに加わったカミーユが、タイ・ホーは地下の賭博場にいることを教えてくれた。
タイ・ホー「全財産を賭けて、俺とちんちろりん勝負だ!」
ルキア「よぉし、望むところだ」
グレミオ「坊ちゃん! どうして博打のルールなんか知ってるんですか!!」
 グレミオは時々、親父よりうるさい。真剣勝負の邪魔をされたくなかったので、ビクトールに目配せすると、彼も心得たもので、グレミオの肩をつかむと部屋の隅へ引っぱっていってくれた。
 勝負の結果は、3と5で俺の勝ち。
タイ・ホー「チッ、しょうがねぇな。おい、ヤム・クー、船の用意をするぞ」
ヤム・クー「はいはい」
 タイ・ホーと義兄弟の契りを結んだという弟分のヤム・クーは、ボサボサの頭をかきながら出ていった。
【あれでちゃんとものが見えてるところが凄いね。私なんか、ちょっと前髪が視界に入るだけでうっとおしくてかなわないのに】
 なにか言った、母さん?
【気にしないで。独り言よ】

 やっとトラン湖の古城を手に入れることができた。せっかくだから名前をつけようということになる。ドラゴン城とかオレンジ城とか、果てはルキア城とか………。俺の名前以外だったら、この際なんでも良いよ。
ビクトール「ルキア、どうする?」
 ビクトールの言葉で、みんなの視線が俺に集まった。こういうの苦手なんだよなぁ。母さんが決めてよ。
【じゃあ、梁山(リアンシャン)城で決まり】
ルキア「梁山城はどうかな」
 反対意見も出るかと思ったら、すんなりそれで決まってしまった。
【私がつけたんだもの、良い名前に決まってるじゃない】
 母さん、ここが湖だということを忘れてない?
【…………。どうしてもっと早く言わないの!!】
 誰かが止めてくれると思ったんだけど。
【リーダーの言うことに逆らったりしないわよ〜】
 そっか。今度から気をつけるよ。