S-8 巨大ルーレット

 城を手に入れて、休む間もなくマッシュの指示がとんだ。
マッシュ「コウアンの町にレパントという富豪がいます。彼を仲間に引き入れましょう」
 はいはい、こうなったら何処だって行くよ。
 コウアンの町について早速レパントを訪ねると、貧相な男に追い返されてしまった。また話が違うじゃないか、マッシュ。
 宿屋で対策を話し合っていると、クリンという小男が話しかけてきた。こいつ、レナンカンプにいたこそ泥だ。
クリン「レパントが大事にしている銘刀“麒麟児”を盗み出せば、奴も出てこないわけにはいかないだろ」
グレミオ「私たちに泥棒をしろって言うんですか」
クリン「嫌なら別に良いんだぜ。レパントに会えないだけさ」
 そんなことをして、レパントがこちらの話を大人しく聞いてくれるとはとても思えないが、表に引っぱり出すにはこれしかないのかもしれない。
ルキア「やるだけやってみるか」
ビクトール「そうだな。それしか手はなさそうだ」
 グレミオがマクドール家の坊ちゃんがすることじゃない、と嘆いた。クレオも口では言わないが、嫌そうだ。だけど、これでレパントに会えなかったと手ぶらで帰ったら、マッシュに怒られるのは俺なんだからな。
 クリンに進入路を確保してもらい、レパント邸へ忍びこむ。
 最初に入った部屋に、男が立っていた。あちゃ〜、もう見つかった。
ロック「おや、あなたたちはどなたですか?」
 俺は半ば自棄になって、解放軍であることを明かした。と、ロックの目の色が変わった。
ロック「え、ということは、でかい金庫かなんかお持ちじゃないですか?」
ルキア「いや、それはまだ……。誰かに頼んで作ってもらおうと思ってるところだけど」
 いい加減、荷物が持ちきれない。
ロック「ルキア殿、このロックを解放軍にお加えください。素晴らしい金庫を作って御覧にいれます」
ルキア「では、お前に解放軍の金庫番を命じる」
 ロックは小躍りして、すぐ作業に取りかかります、と行ってしまった。俺はビクトールを振り返る。
ルキア「金庫番が賊を見逃しちゃいけないよな」
ビクトール「わかってて金庫番にしたのか?」
ルキア「作ってくれるって言うものを、断るなんて可哀想なことはしないよ」
 にっこり笑って答えた俺に、ビクトールはやれやれと肩をすくめた。
 怪しげなからくり仕掛けの部屋を抜け、奥へと進むと、からくり師の男が立っていた。もしかして、メグの捜しているジュッポか?
ジュッポ「あちきはジュッポ。御覧のとおり、からくり師でさ」
ビクトール「あのへんてこなからくりは止められないのか!?」
ジュッポ「細々したのはなんとかなるけど、大きいのは無理だね。まぁ、頑張ってよ」
 メグのことを聞こうとする前に、ジュッポはさっさと行ってしまった。頑張ってと言うことは、まだこの先になにかあるのか?
 扉を開けると、俺はこのまま引き返したくなった。
【大きいルーレット! もしかしてこの先へ行くのは運まかせ?】
 さらに気が滅入るから、嬉しそうに言わないでくれ、母さん。
【あの『?』で止まったらどうなるんだろう??】
 さあてね。どちらにしろ、この先に“麒麟児”があるのは間違いなさそうだ。俺たちは恐る恐る、ルーレットに乗った。
 ルーレットは無情にも、出口の一歩手前、『?』のところで止まった。降りる間も与えず、ルーレットはもとの位置へと戻る。いつのまにか“竜印香炉”が置いてあった。
ビクトール「これが景品か?」
ルキア「そうみたいだな」
 くれるって言うんなら、もらってくよ。
 再チャレンジ。今度は宝箱マークで止まる。“お薬”を手に入れた。次はまた?マーク。さすがに、もう“竜印香炉”はくれないらしい。“運の紋章片”に替わっていた。さらにチャレンジすること十数回。
グレミオ「坊ちゃん、私は、目がまわってきましたよ」
ビクトール「気持ち悪りぃ………」
 モンスターと無理矢理戦闘になり、経験値が増えたり減ったりし、荷物が“お薬”と“運の紋章片”でいっぱいになり、つまりいつまでたっても先へ進めない!! あったまきた。
ルキア「戻る」
 一言だけ言って、俺はもときた道を戻った。みんなもフラフラしながらあとをついてくる。レパント邸を出ると、クリンが待ちくたびれた様子で立っていた。
クリン「遅かったじゃないか。それで“麒麟児”は?」
 ビクトールが肩をすくめて、首を横に振る。
クリン「ダメだったのか。チッ、使えないな。また次の機会に出直すか」
 ただでさえ頭にきてるのに、こいつにまでコケにされてさらにムカついた俺は、通り抜けざまクリンを“竜牙棍”ではり倒していった。あぁ、スッキリした。
【………動かないけど、大丈夫なの?】
 大丈夫だよ。こそ泥はゴキブリ並みにしぶといものなんだから。それよりも、はやいとこ荷物をロックに預けて、リトライしないと。あと、この大量の“運の紋章片”はどうしようかなぁ。
【フリックの運の能力上昇値は、ビクトールと一緒なのよね。1個はフリックに使って、あとはみんなルックにあげれば良いんじゃない】
 何故に、ルック?
【綺麗なのに、運が低いのは可哀想でしょ】
 …………いまだに母さんの理屈はわからない。




S-9 ギャンブラー

 梁山城が少し大きくなった頃、タイ・ホーが俺の部屋にやってきた。
タイ・ホー「ルキア、ちょっと話があるんだ」
ルキア「なんだい?」
タイ・ホー「カクの町に、賭博師の胴元をやってるガスパーっていう男がいるんだ。奴を解放軍の仲間にしたら、面白いんじゃないかと思ってね」
ルキア「タイ・ホーの博打のムシが疼きだしたかな」
 タイ・ホーは悪びれもせずに笑った。
タイ・ホー「へへっ、さすがルキア、話がわかってるじゃないか」
ルキア「わかったよ。じゃあ、カクの町に出かけよう。タイ・ホーも付き合ってくれるだろう?」
タイ・ホー「あぁ、もちろんだ」
 久しぶりに、カクの賭博場へ出かけた。
ガスパー「お、久しぶりの顔だぜ」
タイ・ホー「よう、元気でやってるか」
ガスパー「盛大に金をばらまいてくれる客がいなくなって、商売あがったりだ」
タイ・ホー「だったら、お前さんも解放軍に来いよ。いろんな連中がいて楽しいぜ」
ガスパー「ふん、そうだな………」
 じろり、とガスパーが俺を見た。まぁ、なにを言われるのかだいたいの想像はつくけど。
ガスパー「あんたが解放軍のリーダーだな」
ルキア「あぁ。ルキアだ」
ガスパー「良い面構えだ。よし、俺とちんちろりん勝負だ。5,000ポッチ以上、俺に勝ったら仲間になってやるぜ」
ルキア「よぉし、勝負だ!」
 くどいようだが“金運の紋章”のおかげで、俺の懐具合はかなり良い。ちまちま賭けるのもめんどくさかったので、一気に5,000ポッチを賭けた。
【さすが、リーダー、太っ腹】
 まぁ、見てなって、母さん。
ガスパー「さすが解放軍のリーダーは豪快だね。じゃあ、巻き上げさせてもらうとするかな」
 泣きを見るなよ、とガスパーが先にサイコロを振った。
 ちりりん、とサイコロが茶碗の中を転がる。
タイ・ホー「…………」
ガスパー「…………」
ルキア「“1の嵐”だね。3倍払いだから、15,000ポッチもらうよ」
 茫然としたまま、ガスパーは財布を差し出した。そこから15,000ポッチ抜き取って返す。
ルキア「約束だからな、梁山城にもちゃんと来てくれよ」
 コクコクとガスパーは頷く。
【さすがね、ルキア】
 ま、当然の結果だね。
【可哀想に。ガスパー、カモられるのね】
 大丈夫だって、他の仲間から巻き上げられるだろ。
【でも、この胴元、かなり弱そうよ】
 …………大丈夫だって、たぶん。




S-10 城の名前を言ってみよう

 帝国五将軍のうち、クワンダとミルイヒの軍をうち破り、仲間に引き入れる。次はとうとう親父と戦うことになるらしい。やはり気が重くなる。
 オデッサに続いてグレミオまで逝ってしまった。母さんは合流したフリックに夢中で、まったく話にならない。少しくらい気晴らししたって良いだろう。梁山城へ戻る前に、アンテイの町へ立ち寄った。
 町の入り口には案内役のクロンがいる。
クロン「もとの名前で、町の名前を呼ぶことができるようになりました」
 クロンはにっこり笑った。
ルキア「可愛い〜」
 あどけない笑顔に、俺は思わず抱きしめてしまった。
【こらこら、クロン君が固まってるわよ】
 クロンを仲間にしようかな。
【良いんじゃないの。あなたがこれから仲間にしようと思っている、“オパール”の娘よりはずっと可愛いし】
 同感。早速、クロンに事情を説明して、仲間にした。“オパール”の娘、もといエスメラルダも仲間にすると、久しぶりに船を使って城へ戻った。船着き場にクロンがいる。
クロン「ここは梁山城です。へへ、良い気分」
 やっぱり、可愛い〜!!
 城の名前を言ってもらうたびに、クロンにギュウッてすることになりそうだ。