S-11 くノ一(忍びの者 その壱)
城の広間へ行くと、やはりマッシュが待ちかまえていた。あれ、隣に女の子がいる。
マッシュ「お戻りになられましたか、ルキア殿。ロッカクの里の忍びが危機を報せてくれました。彼女の話を聞きましょう」
マッシュから視線を女の子に移して、俺はかぁっと顔が火照るのを感じた。
【これまた、凄い衣装のくノ一ね】
カスミ「ルキア様。私はロッカクの里の忍び、カスミと申します」
顔も声も控えめな物言いも、俺の好みなんだけど、あの衣装のせいでまともに視線をあわすことができない。解放軍に集まる女の人の衣装は、まったく露出がないか目のやり場に困るか、両極端だ。
マッシュ「ルキア殿、聞いておられますか」
ルキア「聞いてる。親父の軍がすぐそこまで来てるんだろ。迎え撃つ準備をしろ」
マッシュ「はい、直ちに」
マッシュは満足げに頷いて、指示を出すために広間を出ていった。
カスミ「あの、ルキア様」
ルキア「え、な、なに……?」
うわぁ、カスミがまだいたんだ。
カスミ「私も解放軍の一員にお加えください。戦争では、事前に敵の攻撃を調べることができます」
ルキア「それは頼もしいな。こちらからも、ぜひお願いするよ。一緒に戦ってくれ」
カスミ「はい」
………本当に可愛い子なんだけどなぁ。なんだって、この服………。
【なに言ってるの。嬉しいくせに】
母さん!!
S-12 忍びの者 その弐
親父の軍にこてんぱにやられ、俺たちは最後の希望“火炎槍”を入手するために、秘密工場へとやってきた。鍛冶屋の三番手、モースはちゃんと“火炎槍”を完成させてくれていた。よくやった!
準備ができるまで工場を歩いていると、知った顔に会った。
ルキア「お前は………」
カゲ「久しぶりでござる、ルキア殿」
ルキア「カゲっていったかな。サラディで、タイミング良く邪魔してくれたよな」
以前、オデッサと“火炎槍の設計図”をサラディの村まで届けた。宿に部屋を取ったその夜、オデッサと二人きりで話をする機会があった。話が盛り上がりかけたとき、いきなり気配を現して邪魔したのがこいつだ。
カゲ「あのまま延々、惚気話を聞きたかったわけでござるか?」
ルキア「う……。ところで、カゲはいま誰かと契約中なのか?」
俺は強引に話を変えた。
カゲ「いいえ」
ルキア「じゃあ、俺と契約しよう」
カゲ「それがしは高いですぞ。この戦争が終わるまでの契約で、20,000ポッチでござる」
ふっかけてくれるじゃないか。
ルキア「良いよ。払う」
武器レベル10以上の働きはしてくれよ。
20,000ポッチを渡して、俺は改めてカゲを見た。
カゲ「? なにか?」
ルキア「いや、やっぱり忍びはこうだよな、と思ってさ」
カゲ「はぁ……」
やっぱり忍びの格好は、これが定番だよなぁ。
【いまだにカスミと視線をあわせて話ができないなんて、修行が足りないわよ】
母さんに言われると、余計に口惜しい。
【まぁ、頑張んなさい】
チクショー、いまにみてろー。
S-13 協力攻撃
親父の軍に勝った。頑固親父は頑固者らしく、自分の信念を貫いてさっさと逝ってしまった。ソニアに会ったら、なんて言えば良いんだ……?
先のことはとりあえずおいといて、目先の問題を先に片づけることにする。親父が俺に遺してくれた、二人の腹心の部下のことだ。
ルキア「アレン、グレンシール、ちょっと話があるんだけど良いかな」
アレン「なんでしょう、ルキア殿」
ルキア「二人とも、親父の遺言とはいえ、解放軍に加わるなんて不本意なことじゃないか?」
アレン「ルキア殿………」
グレンシール「我ら、テオ様の遺志に従うことに、なんの不満もございません」
ルキア「本当に? 俺たちの邪魔はしないと約束してくれるなら、無理に引き留めるつもりはないんだ」
アレン「………テオ様の遺志だけではありません。私はこの戦いの行く末を見届けたいと思っています」
グレンシール「ルキア殿が、腐りきってしまったこの国に、新しい風を巻き起こしたことは賞賛に値すると思っています」
ルキア「アレン、グレンシール……。ありがとう」
二人が解放軍のために戦ってくれるという確約を取ったところで、俺は紙とペンを取りだした。
ルキア「じゃあ、二人とも、ここにサインしてくれないかな。フリックの名前の隣にね」
訝りながらも、二人はサラサラと署名してくれた。
グレンシール「ルキア殿、これはなんの署名ですか?」
二人のサインを確認してご満悦の俺に、グレンシールが訊いた。
ルキア「あ、これ? 協力攻撃の一覧表」
アレン「は?」
まだ城を手に入れて間もない頃、マッシュからこの表を渡された。
マッシュ「レックナート殿より、この表を預かりました。ルキア殿が決めるのがよろしいかと」
すでに名前が記入されている協力攻撃もあったが、残りは自分で人選して決めろということらしい。体よく面倒事を、マッシュは俺に押しつけたというわけだ。
でも、これを決めるのは思ったより面白い作業だった。ただ一つを除いて。曰く『美青年攻撃』。とにかく、母さんがうるさい。
【だって〜】
だってじゃないだろ。………まぁ、確かに解放軍の平均年齢は高いので、『美青年』を挙げるのは大変だ。しかも三人も選べなんてさ。
【一人は当然、フリックで決まりよ!!】
はいはい、わかったよ。問題は残り二人だ。『美』がつくかどうかはともかく『青年』のメンバーの名前を挙げるのだけど、アレはダメ、コレはダメ、といちいち母さんが難癖をつけて結局、いままで決まらなかった。
今回、めでたく母さんの眼鏡にかなう『美青年』が二人も一緒に仲間になってくれた。これを逃す手はないよな。
ルキア「えっと、敵単体に対して2倍ダメージの『美青年攻撃』を、フリックをいれた三人でやってもらうから。頼んだよ」
茫然としている二人を残して、俺はその場を離れた。いま頃、あんなこと言うんじゃなかった、と後悔してるかもしれない。
【気にしない、気にしない。あとはどの協力攻撃が残ってたっけ?】
まだいくつかあるけど、問題は『ヒカリ攻撃』だよなぁ。
【あと一人だっけ。……レックナート様もキツイ人だよね】
まったくだ。
S-14 夜鳴鶯(ナイチンゲール)も恥じる声
あの変態吸血鬼を倒すための方法を求めて、クロン寺の洞窟に入ることになった。でもその前に、寺の中をもう少し見てみたい。こんな造りの建物はグレッグミンスターじゃ見られなかったし、なによりこの静謐な雰囲気が気に入った。
一人で歩いていると、ガランとした部屋に出た。瞑想でもする部屋かな。
モーガン「どなたかな?」
うわぁ、ビックリした。部屋の隅に、男がいた。
ルキア「解放軍を率いているルキアといいます。すみません、瞑想の邪魔をして」
モーガン「こちらこそ驚かしたようで申し訳ない」
男は目を閉じたまま、俺の近くまで歩いてきた。よく見ると、瞼の上を横一直線に刀傷が走っている。
モーガン「私の名はモーガン。この寺で格闘家としての修行を積んでいます」
ルキア「そうですか」
モーガン「………あなたの顔、拝見してみたいですね。その声、興味を覚えますよ」
母さん、俺の耳はおかしいんだろうか。なんか、いま、告白されたような気がする。
【大丈夫。私もそう聞こえたから】
頭の中がぽぉっとなったまま、気がつくとモーガンを仲間にしていた。
ところで、母さん、あのタイトルはどういう意味?
【シェイクスピアの書いた台詞。やっぱり男は声が良くなくちゃね。息子がその通りに成長して、母さん、嬉しいわ】
あれは、男が女の声を褒めた台詞だろう!
【気にしない、気にしない】
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