S-15 戦士の村の歌

 “27の真の紋章”の一つ、“夜の紋章”は口が達者な“星辰剣”という一振りの剣に姿を変えていた。ビクトールが霞むほど、態度がでかい。もしかして、真の紋章はみんなこんなんなのか!? 俺は自分の右手の紋章を見つめた。
 ゾッとする考えを、頭を振って追い出す。いまはとにかく、テンガアールを助けに行かないと。
 テンガアールの幼馴染み、ヒックスもパーティメンバーに加わった。
ゾラック「テンガアールを頼みます、ルキア殿」
ルキア「わかった」
 さぁ、ネクロードの城に乗り込むぞ、と城の大扉を振り返ったとき、地をはうような重低音が聞こえた。……?
【これ、歌?】
 振り向くと、ビクトールもクレオもこの重低音の音源を捜している。フッケンは相変わらずの渋い顔。フリックが複雑な表情で、額を押さえている。ヒックスは顔がひきつっていた。………これはもしかして。
 見送ってくれるゾラック村長の後ろを見ると、戦士の村のみんなが歌っていた。
ルキア「…………。ヒックス、この歌、なに?」
ヒックス「え、え、あ……あの、僕はまだ戦士になりたてなんで、わかりません……!」
ルキア「…………フリックも戦士の村出身だよな」
フリック「な、なんのことだ、ルキア。さぁ、早く行かないと、テンガアールがあの変態野郎に血を吸われちまうぞ」
ヒックス「そうですよ、ルキアさん。急ぎましょう!!」
 フリックとヒックスの二人に背中を押されて、強引にネクロードの城の中へ入れられてしまった。二人は大急ぎで、城の扉を閉めている。
 …………フリックが故郷に帰るつもりはないと言っていたのは、もしかしてこれが原因だろうか?




S-16 忍びの者 その参

 竜洞騎士団と同盟を結ぶため、竜騎士の砦にやってきた。騎士団長のヨシュアに会うため、砦の中へ入ろうとしたが、ふと奥に赤いものが見える。
 気になって側に行くと、目の覚めるような真紅の衣装をまとった男がいた。
フウマ「気配を消していた拙者に、よくぞ気づかれた」
 え、いや、気配がどうとかじゃなく………。でも、色はともかく、服の形やこのしゃべり口からしてこいつも……。
フウマ「拙者の名はフウマ。忍びの者として修行の旅の途中でござる」
 やっぱり………。この国の忍びって、間違ってる気がする………。
【そんなことどうだって良いじゃない。彼も仲間にしようよ。戦争のとき便利だし、貴重な長髪美形よ】
 …………。




S-17 心の友

 モラビア城まで、ビクトールと北の大富豪・ウォーレンを救出するためにやってきた。時間稼ぎをマッシュとグリフィスに任せて、最上階にあるという牢に向かう。
ビクトール「遅いぞぉ、ルキア。待ちくたびれたぞぉ」
ルキア「お待たせ」
 牢の中には、ビクトールとウォーレンの他に、もう一人いた。
ルキア「あれ? ヴァンサン、どうしたんだ?」
 ミルイヒ以上にかっとんだ衣装。忘れもしない、ヴァンサン・ド・ブールだ。
ヴァンサン「おぉ、ルキア、我が心の友じゃないですか」
ウォーレン「ルキア殿! お初にお目にかかる、ウォーレンと申します」
ルキア「あぁ、よろしく、ウォーレン。それで、ヴァンサン、どうしてこんなところに」
ヴァンサン「聞いてください、ルキア」
ビクトール「さぁ、ルキア! 行くぞ! マッシュたちが時間稼ぎしてくれてるんだろ」
ルキア「うん。でも、ちょっと待って」
ヴァンサン「久しぶりにカシム将軍を訪ねたら………」
ウォーレン「さぁ、参りますぞ!」
ビクトール「グズグズするな、ルキア!」
ルキア「え? ちょっと、まだ話が……」
 ビクトールとウォーレンに両腕をがっしりつかまれて、俺は引きずられるように牢から連れて行かれた。
ルキア「ヴァンサン! 必ず助けに来るからなー!」
ヴァンサン「心の友、ルキア! あなたを信じ、私は待っていますよ!」
【これが男と女だったら、引き裂かれる恋人同士の図で、とっても綺麗なのにねぇ】
 まったく、ついでに助けてやったって良いと思わないか?
【まぁね。でも、ビクトールたちの気持ちも少しはわかるわ】
 どうしてさ。面白い奴なのに。
【…………そうね】




S-18 金運の紋章

 “約束の石版”にすべて名前が記入された。やれやれ、と食堂でレスターのシチューに舌鼓をうつ。と、ドヤドヤとビクトールを先頭に、団体が入ってきた。
ビクトール「お、いたいた」
 ビクトールは俺を見つけると、当然のように向かいの席に腰を下ろす。一緒に入ってきた連中は、まわりのテーブルにすわった。
ルキア「……どうしたんだ?」
ビクトール「あ、悪ぃな、食事中に。……その、ちょっと聞きたいことがあってだな」
ルキア「なにを?」
 ビクトールは珍しく歯切れが悪い。まわりの連中は何気ない素振りで、こちらの会話に耳を集中しているようだ。……なんだぁ?
ビクトール「ルキア、お前、超レア封印球を持ってたよな」
ルキア「……あぁ、“金運の封印球”のことか?」
ビクトール「そう、それだ! それ、どうした?」
ルキア「どうしたって………。え、どうしたっけ?」
 みんなの目の色が変わる。
ビクトール「おいおい、ルキア、思い出してくれよ」
ルキア「最初は俺がつけてただろ。それから魔術師の島へ行く前にグレミオにつけて、大森林に行く前に今度はキルキスに宿して、それから……。ビクトールに宿して、フリックに宿して、次は誰だったけ………。あ、思い出した、ペシュメルガだ。ペシュメルガにあげたんだ」
ビクトール「なに〜!?」
 俺の言葉に、ビクトールだけでなく、まわりにいたみんなも立ち上がって、俺に詰め寄った。
ビクトール「マジかよ、ルキア。ペシュメルガにあげたって」
ルキア「あぁ。もう充分、お金も貯まったし」
タイ・ホー「奴にあの封印球の価値がわかるのか?」
アンジー「あいつは飯も食わないらしいぞ」
クリン「封印球どころか金の価値もわかってないぞ」
グリフィス「そいつは、ちょっともったいなさ過ぎってもんだろう」
ビクトール「ルキア、考え直したほうが良いんじゃないか」
 …………。
【まぁ、当然の反応といえば当然の反応だわね】
ルキア「こうなると思ったから、彼に宿したんだけど」
 封印球を宿せない連中やら、固定で外せない連中まで来ているのをジロリと俺は見渡した。
ビクトール「…………ごもっとも………」
 ガックリとビクトールたちは肩を落とした。




S-19 里帰り

 とうとうグレッグミンスターへ帰ってきた。久しぶりの帝都だ。
ルキア「その前に、メグ、レナンカンプへ行くぞ」
メグ「えぇ!! 別に良いよ、ルキアさん」
ルキア「ダメ。あんまり親に心配かけるのは良くないよ」
メグ「…………はい」
 レナンカンプのメグの家へ立ち寄った。
 メグの両親は突然の娘の帰郷に驚き、そしてすぐに暖かく迎えた。待っててくれる人がいるっていうのは、羨ましいな。
 突然、メグのお父さんがいきなり俺に話を振ってきた。曰く「そちらはお婿さんか?」と。
メグ「やだな、お父さん、違うよ。こちらは解放軍のリーダーのルキアさん」
 本当のこととはいえ、間髪入れずに否定されるのって、ちょっとガッカリくるね。
【ちょっとじゃなくて、かなりでしょ】
 …………。
【そういえば、クリンもつれてこれば、なにか面白いことがありそうじゃない? 見つけたら教えてくれって、被害者が言ってたし】
 奴はいいよ。あんまり関わりたくない。
【あらあら、相当凹んでるわ】