Nanami's Case
カミューは真っ直ぐにナナミのもとへ向かった。手には藍の小箱。
(さて、どんな顔を見せてくれるでしょうね……?)
ナナミは庭園の池の畔にすわっていた。
「あ、カミューさん、お帰りなさい」
「ただいま、ナナミ」
ナナミの隣にカミューは腰を下ろした。
「はい、ご依頼の品ですよ」
差し出された小箱を、ナナミは満面の笑顔で受け取る。
「ありがとう、カミューさん!」
箱を開けかけて、なにかに気がついたように動きを止めた。
「ごめんなさい、いくらでした?」
「いいですよ。レディにお金を出させるわけにはいきませんからね」
「でも………」
「私からのプレゼントは、受け取れませんか?」
ナナミは勢いよく、首を横に振った。
「謹んでちょうだいいたします」
「どうぞ、お受け取り下さい」
二人は顔を見あわせて笑った。
「開けても良い?」
「もちろん」
小箱の中身は、箱と同じ藍色のケースの口紅。
色は、コーラルピンク。
「うわぁ……」
いざ口紅を手にして、これをつけた自分を想像すると、胸をくすぐるときめきと気恥ずかしさで、ナナミは言葉が出てこない。
「ナナミには、こういうアクティブな印象のある色がよく似合うと思ったのですが、気に入りませんでしたか?」
「うぅん、違うの! 嬉しくて、言葉が出てこなくて……」
「良かった」
ホッとしたように笑うカミューと、口紅をナナミは見比べる。
『お兄さんと妹』みたいな関係を打破したくて、手に入れた口紅。この気持ちが憧れでも、無理して背伸びをしているわけでもないことを知って欲しい。
「……つけてみても良い?」
怖ず怖ずと尋ねたナナミに、カミューは変わらぬ笑顔で頷いた。
「えぇ。ぜひ、つけたところを見せてください」
「うん!」
ナナミは池を鏡がわりにして、口紅をつけた。
「どうかな、似合ってるかな?」
振り返ったナナミは、元気いっぱい爽やかなイメージを損なうことなく、ほんのり色っぽさを唇にのせている。
思った通り、よく似合っている。カミューは少し困ったように笑って、ナナミの肩を抱き寄せた。
「困ったな……」
「え? に、似合ってない?」
一瞬、泣きそうな表情を見せるナナミに、そういう意味ではないよ、とカミューは首を振る。
「こんな可愛いナナミは、他の誰にも見せたくないですね」
ナナミの顔が火がついたように赤くなる。照れくさくて胸に顔を埋めてきたナナミの頬に、カミューは手を添えてそっと上を向かせた。
「えっと、じゃあ、この口紅はカミューさんと二人っきりの時だけにつけるね」
「そう願います、my fair lady」
カミューはナナミに優しく口づけた。
(私の気持ち、ちゃんと届いてるんだ……)
二人の想いは、咲き誇る花。
END
幻水サイト様を彷徨っていたときに、ちらっと読んだカミナナ小説がとても可愛くて、当寮でも採用となりました。
カミューが気障すぎたかな? う〜ん、でも、彼ならこれくらい平気な顔で言いそうって思うですが・・・。ダメ?(;'-')
コーラルピンクは、明るい赤みの橙がかったピンクです。オレンジ系の色は使ったことがないな。メイクを頼んでも、そういう色を塗ってもらったことがないので、似合わないんだろうなぁ。
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