レオナがカウンターへ戻ると、ローレライがすわっていた。
「いらっしゃい」
「ルキアは来てないのかい?」
首を横に振って答えたレオナに、ローレライは残念そうに溜め息を吐いた。
「そう……。元気になったメグとすれ違ったから、てっきりいるのかと思ったのに……」
「……たぶん、ジーンのところだよ。昼間、約束してたのを見たから」
「ふぅん……」
気のない返事に、レオナはローレライ好みのすっきりした辛口白ワインを一杯奢る。
「珍しいね、奢ってくれるなんてさ」
「今日はもう、暗い顔は見たくない気分なんでね。それ飲んで、いつものあんたに戻ってくれれば良いさ」
「………それはちょっと難しいな」
苦笑して、でもワインにはちゃっかり口をつけてローレライは答えた。
「それは、ルキアのせい?」
「…………」
ローレライは沈黙で返す。
「あんたは、あの子の何処が好きなんだい?」
これには即答だった。
「強さ」
「なのに、どうしてそんなに心配してるんだろうねぇ……?」
「好きな男の心配をするのは当たり前のことだろ」
「あんたといい、メグといい、どうして別格の相手がいる男に惚れるのか、私にはさっぱりわからないよ」
「ルキアは、優しい。だから、恋に憧れるばかりの少女たちは、その魅力に取り憑かれてしまうのさ。………だが、いくら稚くてもやがては気づく。ルキアの想いが奈辺にあるのか、本当に欲しいものがなんであるのか。なのに、あいつは限りなく貪欲でもあるから、拒絶することなんて絶対にない。結局、こっちが自分で自分との折り合いをつけていかなくちゃならないんだ。潔く諦めて身を退いたり。独占欲に蓋をして、それでもルキアの腕に飛びこんだり。ねだるばかりの想いを、見返りを望まない愛情へ変化させたり………」
「………あんたはどうなのさ?」
「私……? そうだね……。そんな綺麗事なんてどうだって良いかな。ただの男と女。難しいことは考えずに、愛欲に溺れるだけさ。………そうすれば、あいつに、なにかに耐えるような儚い笑顔をさせることもない……」
残り少なくなったグラスに、レオナはワインを注ぎ足した。
「知ってるかい……? 誰かを気遣うことが愛情だって」
ローレライはそうだったかな、と嘯いた。
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